『幻の動物とその生息地』

ニュート・スキャマンダー(J.K.ローリング)

 ただいま映画放映中で話題沸騰のニュート・スキャマンダー氏の著作です。現在、通常の書店での入手は困難ですが、氏の冒険の映画化を受けて来年の三月に新装版を発売する予定とのことです。

 世界中の魔法動物について記述があり、スキャマンダー氏の知識の広がりには目を見張る物があります。ドラゴンやユニコーンなどの有名なものから、オカミーやパフスケインといった私たちにはなじみのないものまで、紹介されている魔法動物は多岐にわたります。

 また、スキャマンダー氏は魔法動物を訪ねて世界を回った際に日本にも足を運んでいるらしく、日本の妖怪カッパが魔法動物として取り上げられています。ぜひ、スキャマンダー氏が採取した情報と日本の伝承とを比べてみてください。

 さらにこちらは、かの有名な魔法界の英雄、ハリー・ポッター氏の蔵書の複製であり、学生時代に彼と友人のロン・ウィーズリー氏が書いた書き込みが散見されます。

 教科書への書き込みと言えば、プリンス氏のたぐいまれなる洞察力に満ちた『上級魔法薬』が有名ですが、プリンス氏の書き込みとは違ってポッター氏とウィーズリー氏のものは大変ほほえましいものです。

 その書き込みには、日本でもなじみ深い〇×ゲームがある一方で、ハングマン(hungman)というイギリス独特の単語当てゲームも見受けられます。魔法族とマグルの間の相互理解だけでなく、日英の文化比較にも興味深い一冊です。

 さて、こちらの書籍はJ.K.ローリング女史がコミック・リリーフという寄付団体のために執筆したホグワーツ関連図書二冊のうちの一冊です。ちなみに、もう一冊は魔法界のスポーツについて書かれた「クィディッチ今昔(いまむかし)」という、ホグワーツの図書室の蔵書です。

 ハリー・ポッター・シリーズは大変有名になりましたので、小説を読んでない方もホグワーツという単語は聞いたことがあるかと思います。改めて説明しますと、ホグワーツ魔法魔術学校は主人公であるハリー・ポッターが通う魔法族の学校です。マグルというのは、魔法族でない人間を指すイギリスでの言い方です。

 この本は、元々はホグワーツの授業風景を演出するための小道具として、地の文章にちらっと出てきたに過ぎません。それが、ハリー・ポッター・シリーズが売れたことで、関連本として書籍化され、発売から15年の時を経て、とうとうJ.K.ローリング女史自身の脚本で、著作者であるニュート・スキャマンダー氏の話が映画化されるに至りました。

 著作に取り上げられている魔法生物に関する記述はもちろんのこと、ハリーやロンの授業風景を想像させるような書き込み、さらには著作者であるニュート・スキャマンダー氏の性格や遍歴、その時代背景まで作り込まれ、「魔法界は本当にあるんじゃないか」「J.K.ローリングはそれをフィクションと偽って発表しているだけじゃないか」と思いたくなるくらいです。

 放映中の『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』も、とても面白かったので、話題の本として選択しました。「出版された時点で落書きがしてある本」というのも珍しいのではないでしょうか。彼らの著作や書き込みに興味が沸いたら、ぜひハリー・ポッター・シリーズも読んでみてください。物語の本筋だけではない、周辺世界への広がりを味わって貰えたら幸いです。

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