僕の一番最初の読者である君へ

 君はいつだって一番最初に僕の小説を読んでくれる。僕が書き始めたばかりの頃は、僕は書くことが、君は読むことが、お互いにただただ楽しかった。そうだろう? あの頃は僕が書いた話がどんなつたなくったって、君は笑って「面白いよ!」って言ってくれたよね。

 でも、そのうち僕はそれだけじゃあ満足できなくなってしまった。君に、もっと多くを求め始めた。僕は、君に僕の小説の批評をして貰いたくなったんだ。

 今だからはっきり言うけれど、君は僕にとって優れた読者で、最高の批評家だよ。

 僕の書いた文章の意図を君はいつだって汲み取ってくれるし、良いところは手放しで褒めてくれる。でも、君は少しばかり僕の意図を読み取りすぎるし、僕の小説の悪い点を指摘するのも苦手だね。この間までは遠慮がちに眉をひそめるだけで、指摘なんてとてもしてくれそうになかった。それに、僕も都合よく君の表情を無視していた。

 だけど最近は君も、もう少し勇気を出して、僕に(すごく言いづらそうに唸るだけだけど、)君の気に入らない点を指摘しようとしてくれるようになったし、僕を傷つけまいとする君の表情の変化に僕も注意を払うようになった。

 いま書いている小説にだって、君は僕に気づかれないように、でも気づいて欲しそうに、小さな声でぶつぶつと「ここは気に入らないんだ」って文句を言っているね。

 知らないと思ってた? 残念、ちゃんと気づいてたよ! 正直、君が気に入るように書き直せるかはわからないけど、でも無事に小説が完成したら絶対にそこまで戻って書き直すつもりだよ。そうすることが、僕にとってもいいことなんだって、最近は心の底から思えるようになったんだ。

 それに今回の小説では、君は何度も読まされても「もういい。飽きた」って言わなくなったね。僕も前より成長したってことかな。もっとも、まだ書き上がってないから、そのせいかもしれないけど。

 前に長編を書いた時には、君は途中で音を上げて「そのシーンはもういい。読み飽きたよ」って、さんざん言ってたよ。まあ、それでも「つまんない」とは、ついに最後まで言ってくれなかったけどさ。

 でも、いいんだ。

 だって、君に「つまんない」って言われちゃったら、僕はもう小説なんて書けないもの。きっと未来永劫書けないよ。だから、君の判断は正しかったんだ。「つまんない」って言葉は、もうちょっと距離のある人に言ってもらった方が良かったんだよ。僕にとっても、君にとってもね。そして、それは言ってもらえた。

 僕と君じゃあ密着しすぎて、伝わりすぎてしまうんだ。僕にとって君は、最初の読者で最後の味方だから。

 これからも僕は、君に色々と無茶なお願いをすると思う。

 言い難いことを言って欲しがったりとか、クソつまらない、未完成で中途半端なものを読ませたりとか。だけど、僕はいつも僕にとって最高に面白い小説を書きたいと思ってるし、それはつまり君にとって最高に面白い小説ってことだ。

 確かに、途中の段階の文章は味気なかったり、間違ってたり、つまんなかったりする。それでも君が読んでくれるから、僕はそこからもっと良くしていくことができるんだ。本当に感謝してる。

 これからも君は、僕の一番最初の読者であり続けることを余儀なくされているけど、僕は頑張るから、どうかこれからも僕の書く小説を読みたいと思い続けて欲しい。君が望む限り、僕も小説を書くことを余儀なくされているんだから。

 僕の一番の読者である敷島雄也へ
 君の専属作家である敷島雄也より

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