日本人としてこれだけは知っておきたいこと  中西 輝政

 タイトルに惹かれて、いつもの古本屋で購入したPHP文庫。2006年初版なので4年前の本ですね。

 著者は敗戦の反省なしの状態の現状を憂うと同時に日本人がその誇りを取り戻すことを期待してます。しかし、著者がキーとして挙げた2010年現在、残念ながら情勢は好転するどころか、民主党政権になって悪化しています……。(2011/01/25追記:そして、悪化は継続中……。)

 歴史への連続性を絶たれたため「日本国民」としての自画像を上手く描けなくなってしまった日本人の為に、その原因となった第二次世界大戦の敗戦から『日本とは何か』を問い直す著作。

 どちらかと言えば若い人向けの本。

 平易な言葉で判りやすく開戦の経緯と敗戦後の経緯をまとめ、その上で日本とは何かを指し示している。

そういえば敗戦記念日って考えると8/15はちょっと変な日だ

 著者の大東亜戦争に関する見解は私の持っているものとほとんど同じですね。

 大東亜戦争のもっとも反省すべき点、つまり今後の対応に活かしていかなければならないのは何より、その外交面での失敗と戦略的な愚かさです。戦争はしないにこしたことはないけれど、必要ならば戦うべきだし、戦うならば勝つべきでした。

 大東亜戦争の一番まずかった点は国際的に孤立して「戦えば負けるのに、戦わなければならない立場に追い込まれてしまったこと」です。それを踏まえて今後、日本のとるべき道は、国際的に孤立しないこと。

 その為には日本人同士の「以心伝心」は国際社会では通用しないことを認識し、日本の立場をしっかり示し「YES,NO」をはっきりさせることが必要です。外国相手に「わかってくれるだろう」は通用しないのだから、自分の意見はしっかり主張していかないと、相手もこちらのことがわからなくて信頼してくれませんからね。

 戦後の「日本は社会主義の一大実験場だった」って話は初めて触れる意見で、なかなか面白かったです。まぁ、そうやって考えると日本は確かに左派が幅を利かせすぎですね。ちょっと右に寄りすぎに見えるくらいが外国での中道、または中道左派だったりなんて話はよく聞きます。

 日本の左派は根底に愛国心がないなんてのもよく言われますが、それもソ連による情報工作と言われれば納得。ただ、それで納得できてしまう土壌があるのがなんとも……。

「日本は世界一成功した社会主義国」

「ロシア人が日本を訪れると、そこに自分たちが実現しようとした社会主義の理想を見て感動する」

 どこまで本当か知りませんが、個人的には結構印象深い言葉でした。今回、本を読んでいて、さもありなんと納得してしまいました。

 後半は日本の国体、「日本そのもの」についてですが、「国体とは日本文化ひいてはその心、つまり『日本の国体』とは『日本の心』だ」と言うのはなかなかわかりやすくて印象深かったです。

 日本の心、要するに誠実さや「和をもって貴しとせよ」の和の心。

 こういった根幹の部分が一番肝心で、日本が日本であるために大切にしなくてはならないことだって話しです。

 国体、つまり日本国に何を求めるかってのは、私は「自分がどう生きたいか」って話だと思うんですよね。

 安全に暮らしたい、自由に発言したい、好きな本を読みたい。

 そういう小さな願い、ささやかな己の希望を反映させるのが政治です。治安維持の為の警察、言論の自由とか、思想の自由とか、そういったものが日本国憲法で(つまり国によって)保障されてるから安心して暮らしているわけです。それが、最終的には日本と言う国をどう運営していくかって話になると思うわけです。

 つまり国体ってのも自分がどう生きたいか、その為には日本にどう在って欲しいのかってことだと思うんですよ、私はね。

 最後に、どうでもいいことですが、日本って正式名称が「日本国」なんですよね。「日本共和国」でも「日本皇国」でもなく「日本国」。ついでに、読み方は「にほんこく」「にっぽんこく」どちらでもいいそうです。一応、にっぽんこくのが読み方の歴史としては古いらしいですが、正式にどっちでもOK。

 これ、日本のすごい不思議なことの一つだと思うんですよね。

 だって今時、国の正式名称に国の体制が入ってない国って日本のほかにないんじゃないでしょうか? (※2011/01/25追記:書いた後すぐに気が付きましたがカナダがそうですね。でも、全体的に見てすごく少ないのは確か。)

 「アメリカ『合衆国』」「ロシア『連邦』」「中華『人民共和国』」「大韓『民国』」「中華『民国』」

 日本の周辺を眺めただけでもこの通りですし、どうしてなのか結構純粋に疑問ですね。大した理由ではないんだろうか。

2010/04/02
2011/01/25加筆修正
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