『Let it go』が良すぎて英語-吹き替えを無限ループ耐久四日目突入記念

3/14公開のディズニー映画『Frozen』(邦題:アナと雪の女王)の主題歌『Let it go』を無限ループしています。インディナ・メンゼルさんの英語バージョンよりも、松たか子さんの日本語吹き替えバージョンの方が明るい歌に聞こえるので、個人的に考察してみたいと思います。
映画そのものについての感想はこちら

アナと雪の女王公式ページ
Let it go 英語バージョン
Let it go 日本語バージョン

音楽的な理由

まず単純に英語バージョンの方が音が小さいですw。これが1:30以降(英:The cold never bothered me anyway 日:少しも寒くないわ のあと)に顕著に出ています。吹き替えバージョンでは弦楽器(ヴァイオリンかな?)の高音・ドラムのリズムがよく聞こえてきます。しかし、英語バージョンではあまり聞こえず、ほぼピアノ伴奏になってしまっています。この辺で後半の躍動感の違いが出ている気がします。
次に、松たか子さんの方が声が高い。別に音程がずれているわけでは有りません。同じ音域内(ドの音ならドの音内)で、松さん(って、呼び方はなんか違和感がw)は高い部分、メンゼルさんは低い部分で音をとっているようです。これは特に1:30以降で顕著。出だしは二人ともほぼ同じ音で歌っているのもあり、松さんのバージョンは1:30以降が余計に明るく聞こえます。
これは英語と日本語で、同一人物でも英語を話す時は声が低く、日本語を話す時は声が高くなる傾向にあることも関係ありそうです。日本語の方が母音が多いから、その点で明るく聞こえるのかもしれません。

歌詞の違い

注意して聴いてるとわかるのですが、日本語吹き替えの歌詞はだいぶ意訳されています。せっかくなので、拙訳と共に歌詞を比べてみましょう。歌詞は上記、YOUTUBEの動画から引用。
日本語吹き替え拙訳
降りはじめた雪は足跡消して

真っ白な世界にひとりの私
The snow glows white on the mountain tonight
Not a footprint to be seen.
白く輝く雪 今宵 山を覆って 足跡さえ見えない
A kingdom of isolation,
and it looks like I'm the Queen
孤立した王国 私はそこの女王みたい
風が心にささやくの

このままじゃダメなんだと
The wind is howling like this swirling storm inside
風が吠える 心に渦巻く嵐のように
Couldn't keep it in;
Heaven knows I tried
もう抑えられない 私が頑張ったのを知っているのは神様だけ
とまどい 傷つき

誰にも打ち明けずに
Don't let them in, don't let them see
誰にも心を開かないで 誰にも心を見せないで
Be the good girl you always have to be
いい娘でいるのよ あなたはいつだってそうしなくちゃ
悩んでた

それも もう

やめよう
Conceal, don't feel,
隠しておくの 何も感じないで
don't let them know
誰にも知られないように
Well now they know
ああ 今や知られてしまった
ありのままの

姿見せるのよ
Let it go, let it go
これでいい これでよかったの
Can't hold it back anymore
もう秘密にはしておけない
ありのままの

自分になるの
Let it go, let it go
これでいい これでよかったのよ
Turn away and slam the door
背を向けて ドアを閉じてしまおう
何も怖くない

風よ吹け
I don't care what they're going to say
もう気にしない みんながなんて言おうが
Let the storm rage on.
風よ 猛れ
少しも寒くないわThe cold never bothered me anyway
寒さなんて もう気にならないわ
悩んでたことが嘘みたいね

だって もう自由よ

なんでもできる
It's funny how some distance makes everything seem small
変なの 遠くから見れば 何もかもが小さく見えるのね
And the fears that once controlled me
怖くて自分を抑えていたけど
Can't get to me at all
私を煩わせるものは何もないわ
どこまでやれるか

自分を試したいの
It's time to see what I can do
今ならわかる 私に何ができるのか
To test the limits and break through
限界を試して 突破していきたいの
そうよ 変わるのよ

No right, no wrong, no rules for me,
善も悪も規則も 私には関係ない
I'm free!
私は自由なんだ!
ありのままで

空へ風に乗って
Let it go, let it go
これでいい これでいいのよ
I am one with the wind and sky
風になって 空になって
ありのままで

飛び出してみるの
Let it go, let it go
これでいい これでいいんだ
You'll never see me cry
もう私の涙を見ることはないでしょう
二度と涙は

流さないわ
Here I stand. And here I'll stay
私はここにいる ここが私の居場所
Let the storm rage on.
風よ 猛れ
冷たく大地を包み込みMy power flurries through the air into the ground
天地を貫いて 我が力 吹き荒れ
高く舞い上がる 想い描いてMy soul is spiraling in frozen fractals all around
我が魂は霜華の螺旋を描いてあたりに満つ
花咲く氷の結晶のようにAnd one thought crystallizes like an icy blast
想いは凍て風に吹かれたように結晶化する
輝いていたい もう決めたのI'm never going back, the past is in the past
もう戻らない 過去は過去よ
これでいいの

自分を好きになって
Let it go, let it go
これでいい これでいいのよ
And I'll rise like the break of dawn
夜が明けるように 私は立ち上がる
これでいいの

自分 信じて
Let it go, let it go
これでいい これでいいのよ
That perfect girl is gone
完璧な娘は いなくなったの
光あびながら

歩き出そう
Here I stand, in the light of day
私はここにいる 陽の光を浴びて
Let the storm rage on.
風よ 猛れ
少しも寒くないわThe cold never bothered me anyway!
寒さなんて 全然気にならないわ!

一応、音ベースで並べてみたんですが、どうでしょう。
個人的には、英語のLet it go〔Let it go(at that)それでよいとする、それ以上問題としない[何も言わない]。〕(小学館プログレッシブ英和中辞典第四版から)を『ありのまま』と訳したのが凄いと思うのですね。(あと、『少しも寒くないわ』も秀逸。)『Let it go』を『ありのまま』と訳したことで歌詞の感情の流れが、だいぶ変わっているような気がします(まあ、翻訳としては感情の流れが変わっていたらマズイ気もするけど)。
まず、一番の「それも もうやめよう」。この「やめよう」って言葉は、自律的で自分からやめることを選んでます。この後に、「ありのまま」の言葉がくることで、隠していたいた本当の自分を自分から表に出していこうとする積極性が感じられます。
一方、英詩では「Well now they know」になっていて、隠していたことがバレたことが主眼。その後に「Let it go」の言葉がくることで、(本当はバレたくなかったけど)「これでよかったんだ」と自分に言い聞かせています。メンゼルさんの歌い方も、そういう感じです。これは消極的な肯定で、「バレちゃったんだから、もうしょうがない」と歌っています。「I don't care what they're going to say(もう気にしない みんながなんて言おうが)」など、この時点のエルサは非常に他律的です。

この後の二番の歌詞は、あまり意味的な違いはありませんが、一番の最後で「ありのままでいいんだ」と肯定してしまった吹き替えのエルサの方がより積極的です。「ありのままでいい」から「自分を試して変わっていくんだ」とここでも非常に自律的。
英詩のエルサは、自分の現状を少しずつ確認していって、本当に「これでいいんだ」と思い始めたのが二番の歌詞って感じがします。そういう意味では、二番の「Let it go」は、吹き替え版の一回目の「ありのまま」のニュアンスに近いかも。
※2014/05/09追記 あと、二番は歌詞の順序が変わっているのが案外大きい要素である気がします。特にサビの直前の歌詞が、英語は「No right, no wrong, no rules for me,I'm free!(善も悪も規則も 私には関係ない。私は自由なんだ!)」と「I'm free!」(現状肯定)が主眼であるのに対して、日本語は「そうよ、変わるのよ、私!」と「今までの私とは違う」(変化への肯定)が主眼になっています。この「変化する、新しく生まれ変わる」というのが、能動的であると同時に「新しい希望」的なニュアンスがあって、すごく好きです。英語の「To test the limits and break through(限界を試して 突破していきたいの)」の部分をより強調した訳詞ですね。

あと英詞のみの話になるのですが、二番の「Here I stand.(私はここに立つ)」って歌詞は、物語的にキーであると思います。この歌詞とともにエルサは左足で力強く大地を踏みしめ、足下には氷の結晶が広がります。
この足下に氷の結晶が広がる描写は、物語中に四回出てきます。一回目は、幼少期に怪我したアナを抱きかかえてエルサが泣き出すシーン。二回目はエルサの力がバレて、入り江を凍らせながら逃走するシーン。三回目は、この「Let it go」のシーン。そして、四回目は全てが解決した後、お城でスケートリンクを作るシーンです。
これらのシーンが描いているのは、エルサの『存在の仕方』『力をどのようにとらえているか』ではないでしょうか。
一度目のシーンは、アナを傷つけてしまったことで、エルサは力に怯えています。二度目のシーンでは、隠すべきものであった力はエルサの逃亡を助ける存在となっています。この力はエルサにとって思いがけない使い方であって、彼女自身が凍り付く足下を見て非常に驚いた表情をしています。
そして、三度目では自分の意思で力を行使し、強く大地を踏みしめ、自らの存在を誇示しています。エルサのセリフ(歌詞)は「Here I stand.(私はここに立つ)」。私は、これは単純に「立っている」の意味ではなく、「地に足をつけて存在している。ここが私の居るべき場所である。ここが私の居場所だ」というニュアンスがあると思っています。
エピローグのシーンでエルサの使う魔法が手からではなく、足で大地を踏みしめる形で行われたのは、上記のニュアンスを含んでいるからです。セリフこそないけれども、エルサは人々の間に「Here I stand.(私の立ち位置・自分の居場所)」を見つけたわけです。

そして三番。一応、flurryって古語表現が出てきたので古語っぽく訳してみました。まあ、それはいいとして。三番の吹き替えの歌詞って、一番意訳が多い部分なんですが、否定形が全く出てこないんですね。
意訳で秀逸だと思ったのが、「花咲く氷の結晶」。この「花咲く」って入れたのが凄い。ただ「結晶」って言うより視覚に訴える歌詞です。訳出しにくい英語の「spiraling in frozen fractals」を見事に表現してる。あと、「輝いていたい もう決めたの」。これ、英語は「I'm never going back, the past is in the past」ですよ。もう意訳としか言いようがないんですが、エルサの表情と動きを見ると本当にこの歌詞が凄く合ってるんですよねぇ。「I'm never going back, the past is in the past」を「もう決めたの」の一言で表しているように思います。
この後の部分、英詩は過去に別れを告げて、新しく歩き出そうって歌詞です。映像でも、ちょうど夜が明けて、世界にも、エルサにとっても、まったく新しい一日が始まるところです。
一方の吹き替え版。もう、ひたすら肯定。「自分を好きになって」とか、「自分 信じて」とか。ここでやっと「Let it go」の和訳として「これでいいの」が出てくるのも印象的です。自分を全面的に肯定しての「これでいいの」。
んで、最後の「少しも寒くないわ」。これ、英詩は「The cold never bothered me anyway!」。直訳すると、「寒さが私を煩わせることは絶対にありえない」って感じでしょうか。字幕版だと「寒さなど平気よ」なんですが、個人的にはやっぱり「少しも寒くないわ」の訳が秀逸だと思います。
「寒さなど平気」、「寒さなんて もう気にならない」だと、「寒さを感じている」けど「平気」だったり、「気にならな」かったりするんですが、「少しも寒くない」だと、「寒さ自体を感じていない」ってニュアンスだと思うんですよね。エルサは雪の女王なわけですから、「寒くても気にしない」よりも「寒さを感じていない」方がより『らしい』と思うんですが、どうでしょう。英語もたぶん、そのニュアンスだろうと思いますし。
※2014/05/09追記 コメントいただいたので追記します。
「The cold never bothered me anyway!」のbotheredが過去形なのは、過去においても寒さを感じたことがないから、とのことです。neverが付いているので「生まれてから一度も寒いなんて思ったこともないし」という感じだそうです。
anywayが〔いずれにしても、どうせ(これから述べることの方がより重要という願意がある)〕(小学館プログレッシブ英和中辞典第四版から)なので、一番の最後は「マントなんかはおっちゃってるけど、実は寒くないんだよね」(プチッとマントを捨てる)ってシーンだよ、とのこと。
言われてみると、なるほどーって感じですね。さらに、エンディングの歌詞を勘案すると、「寒くない=寂しくない」ってのも見えてくるんですよね。「Let it go」の含意というか、本質みたいなのが「人とは違っているけど、これが私の生き方なのよ」っていうことなのかなぁ、と思いました。(Standing,Frozen,In the life I've chosen. You won't find me. The past is all bhind me. buried in the snow.のあたりのことです)

いかがでしたでしょうか。
個人的には、(拙訳ですが)英語の歌詞と吹き替え版の歌詞を並べられて楽しかったです。そして、吹き替え版の和訳の素晴らしさを語れたので満足です。Frozen楽しみすぐる。
とりあえず、字幕版と吹き替え版で二回行くことは決定済みです。『Let it go』マジ名曲。ほぼ毎日無限ループです。早くサントラ欲しい。「ウォルト・ディズニーの約束」も見に行かないとだし、今月は映画館に行く機会が多そうです。
映画そのものについての感想はこちら


2014/03/06 初出
2014/05/09 追記
※ミッキーの短編の最後の方にちらっとオズワルドが出て手を振っていた。めっちゃ可愛い。
オズ、久々の映画出演&3D銀幕デビューおめでとう!

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